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【デイリーニュース】vol.09 短編①『春』『JURI』『メイリンの決めたこと』 Q&A

美大生と祖父の交流、ホラータッチ、日中ハーフの青春ストーリー

(右から)『』の大森歩監督、『JURI』の多田昌史プロデューサー、仲原由里子さん、畠山U輔さん、『メイリンの決めたこと』の鯨岡弘識監督、葉媚さん、徳永桜介さん

  

9作品で競われる国内コンペティション短編部門の「短編①」では3本が上映された。『』は地方に暮らす美大生の孫と痴呆が進む祖父の交流を描く。『JURI』はオカルト研究会の冬の新人歓迎会キャンプで起こるホラータッチの作品。『メイリンの決めたこと』は国籍選択を迫られた日中ハーフの美鈴(メイリン)の物語だ。

 

』からは大森歩監督が登壇。多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業し、現在は制作会社でCMなどのディレクターとして活躍中。本作は「きりゅう映画祭」の助成を受けて制作され、文化庁メディア芸術祭の新人賞をはじめ、国内の数々の映画祭で上映、受賞している。主演の古川琴音は、堤幸彦監督『十二人の死にたい子どもたち』(18)や山戸結希プロデュース『21世紀の女の子』(18)に出演する期待の若手女優だ。

 

大森監督は「本当は長編用に脚本を書いたんですけども、お金がなかったので。大学生のときに上京し、おじいちゃんと暮らしていた実体験が基。おじいちゃんとの暮らしをSNSで発信していました。そのおじいちゃんが亡くなって、喪失感が強かった。SNSを見直したときに、気持ちを整理したいと思ったんです。美大ではデザイン、広告を勉強していましたが、自分が心から作りたいものはなにかと悩んだ苦しい毎日を思い出しました。うつ病になりかけたこともあって、映画を作って、抜け出そうとしたんです」と語る。

 

大森歩監督

 

雪山キャンプでの一夜を描いたホラータッチの作品『JURI』では、プロデューサー、出演の多田昌史をはじめ、出演の仲原由里子、畠山U輔が登場。本作は芸人を経て、バラエティの放送作家などで活躍し、齊藤工監督の『blank13』(17)の脚本を手掛けた西条みつとしの監督作。主宰する劇団「TAIYO MAGIC FILM」が製作した。「ええじゃないかとよはし映画祭」にて審査員特別賞に当たる、とよはし未来賞を受賞した。

 

プロデューサーの多田は「劇団で初めて撮った作品。昼夜逆転の撮影で、水道が止まったり、トイレが使えなかったりと大変でした」。ヒロイン役の仲原は「大きなスクリーンで上映されるとは思ってもみなかった。スタッフのおかげです」と感謝。劇団員の畠山は「舞台と同じように稽古しましたが、映画と舞台では全然違いました。撮り直せるのが大きいけれども、時間の制約もあって、思うようにいかないところがあった」と振り返った。

 

(右から)多田昌史プロデューサー、仲原由里子さん、畠山U輔さん

 

就活、恋愛、……国籍に悩む中国人ハーフの大学生(葉媚=ようび)の葛藤を描いた青春ドラマ『メイリンの決めたこと』からは鯨岡弘識監督、主演の葉媚、徳永桜介が登壇。

 

鯨岡監督は1993年生まれ。学生時代から自主映画制作を始め、ドラマやMVなどを制作している新鋭。2018年には監督・撮影・音楽を担当した『FROM TOKYO TO TOKYO』(17)がSSFF & AsiaのCinematic Tokyo部門ほか多数の映画祭に入選した実績を持つ。

 

鯨岡は「二重国籍の友人がいたのがきっかけ。題材を正面から撮ると、ヘビーになってしまうので、日常を撮ろうと思いました」。キャスティングについては「出演者は学生時代の同級生。彼らが俳優業をやる前から知っていて、そこに葉媚さんが加わってくれた。日本語、中国語をできる方を探しているときに、モデル業の傍ら、女優をやっていると知り、お会いしたのですが、存在感がすごかった」と振り返る。

 

台湾出身でモデルとしても活躍中の葉媚は「監督の映像作品は美しく、一緒に仕事したいと思いました」と語る。二重国籍に悩むヒロインの心境には共感するところがあったそうで、「私は台湾出身ですが、日本にいると、中国語を忘れてしまう。私は一体、どこの出身なの? と思ってしまう。今は戻るところがあれば、そこが自分の居場所だと思っています」と話していた。

 

(右から)鯨岡弘識監督、葉媚さん、徳永桜介さん

 

短編①」の次回の上映は、7月18日(木)17時30分から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。